前置詞(1)場所と方向
第4部 ・ 第30章
ที่ thîi ใน nai บน bon ใต้ tâai など位置の語を使い分け、「〜の上に」「〜の向かいに」「〜まで」が言える。移動動詞のあとで前置詞を省く形も身に付ける。
日本語は「机の上に」と、名詞のうしろに助詞を付けます。タイ語は逆で、名詞の前に語を置きます。しかもその語の多くは、もとをたどれば名詞か動詞です。この仕組みが見えると、場所を表す言い方は一気に整理できます。
この章のゴール:ที่thîi ในnai บนbon ใต้tâai など位置の語を使い分け、「〜の上に」「〜の向かいに」「〜まで」が言える。移動動詞のあとで前置詞を省く形も身に付ける。
30-1前置詞は名詞の「前」に立つ
日本語の助詞は名詞のうしろに付きます。「学校で」「机の上に」。タイ語はここが正反対で、場所を示す語は名詞の前に立ちます。英語の at school on the desk と同じ位置です。
| ที่ | + | บริษัท | ⇒ | ที่บริษัท |
| 〜で(前置詞) | 会社(名詞) | 会社で |
日本語「会社+で」の順序が、タイ語では「で+会社」とひっくり返る。
もうひとつ、日本語話者がつまずくのは「前置詞」という名前に引きずられて品詞を固定してしまうことです。タイ語には語形変化がありませんから(第1章)、ひとつの語が名詞にも動詞にも前置詞にも見える顔をします。หน้าnâa は「顔・前面」という名詞であり、同時に「〜の前に」という前置詞です。เข้าkhâo は「入る」という動詞であり、同時に「〜の中へ」という方向の語です。
実は日本語も同じ作りです。「机の上に」の「上」は名詞ですし、「〜に向かって」の「向かう」は動詞です。前置詞・助詞のたぐいは、どの言語でも名詞や動詞が薄まってできるのが普通なのです。ですからタイ語の位置語を覚えるときは、「前置詞30個」と身構えず、「上・下・中・外・前・後ろ・横」という名詞を覚えて名詞の前に置くと考えてください。負担がぐっと軽くなります。
30-2ที่ と ใน ── まず押さえる2語
場所を言うときの主役は ที่thîi と ในnai です。役割ははっきり分かれています。
| 語 | 発音 | 意味 | 使いどころ |
|---|---|---|---|
| ที่ | thîi | 〜で・〜に | 地点として指す。建物名・地名・施設名と相性がよい |
| ใน | nai | 〜の中に・〜の中で | 囲まれた空間の内部。外との対比がある |
迷ったときの目安は、日本語で「〜の中」と言い換えて自然なら ในnai 、不自然なら ที่thîi です。「会社で働く」を「会社
นอกnɔ̂ɔk は nai の対で「〜の外」です。
ที่ の3つの顔
ที่thîi はタイ語で最も働き者の語です。① 名詞「ところ」(ที่นี่thîi-nîi ここ、ที่ไหนthîi-nǎi どこ)、② 前置詞「〜で・〜に」
(本章)、③ 関係詞(第36章)、④ 類別詞「席・人前」(第19章)、⑤ 序数の「〜番目」(第32章)。同じ語が5役をこなすのがタイ語らしいところです。
30-3位置を表す語は、もともと名詞である
ここが本章の核心です。บนbon (上)ใต้tâai (下)หน้าnâa (前)หลังlǎng (後ろ)ข้างkhâang(横・側)は、いずれも名詞です。名詞ですから、本来は ของkhɔ̌ɔng (〜の)でつなぎます。
| ข้างบน | + | ของ | + | โต๊ะ | ⇒ | บนโต๊ะ |
| 上の側 | 〜の | 机 | 机の上に |
本来の形は〔上側 の 机〕。日常では ข้าง と ของ が落ちて บนโต๊ะ になる。
と納得できます。
| 名詞の前に置く(=前置詞) | 単独で使う(=副詞・名詞) |
|---|---|
| บนโต๊ะ bon tó(机の上に) | ข้างบน khâang-bon(上のほう・上の階) |
| ใต้โต๊ะ tâai tó(机の下に) | ข้างล่าง khâang-lâang(下のほう・下の階) |
| หน้าบ้าน nâa bâan(家の前に) | ข้างหน้า khâang-nâa(前方) |
| หลังบ้าน lǎng bâan(家の裏に) | ข้างหลัง khâang-lǎng(後方) |
| ในห้อง nai hɔ̂ng(部屋の中に) | ข้างใน khâang-nai(内側) |
| นอกห้อง nɔ̂ɔk hɔ̂ng(部屋の外に) | ข้างนอก khâang-nɔ̂ɔk(外側・外出先) |
位置の語の一覧
| タイ語 | 発音 | 意味 | 例 |
|---|---|---|---|
| บน | bon | 〜の上に(接している) | บนเตียง bon tiang ベッドの上に |
| เหนือ | nɯ̌a | 〜の上方に・〜の北 | เหนือประตู nɯ̌ a prà-tuu ドアの上方に |
| ใต้ | tâai | 〜の下に | ใต้เก้าอี้ tâai kâo-îi 椅子の下に |
| ล่าง | lâang | 下のほうの | ชั้นล่าง chán lâang 下の階 |
| ใน | nai | 〜の中に | ในตู้เย็น nai tûu-yen 冷蔵庫の中に |
| นอก | nɔ̂ ɔk | 〜の外に | นอกบ้าน nɔ̂ɔk bâan 家の外に |
| หน้า | nâa | 〜の前に | หน้าโรงแรม nâa roong-rɛɛm ホテルの前に |
| หลัง | lǎng | 〜の後ろに | หลังร้าน lǎng ráan 店の裏に |
| ข้าง | khâang | 〜の側に | ข้างถนน khâang thà-nǒn 道端に |
| ข้างๆ | khâang-khâang | 〜のすぐ隣に | ข้างๆบ้าน khâang-khâang bâan 家の隣に |
| ระหว่าง | rá-wàang | 〜の間に | ระหว่างสองเมือง rá-wàang sɔ̌ɔng mɯang 2つの町の間に |
| ตรงข้าม | trong-khâam | 〜の向かいに | ตรงข้ามธนาคาร trong-khâam thá-naa-khaan 銀行の向かいに |
| ใกล้ | klâi | 〜の近くに | ใกล้สถานี klâi sà-thǎa-nii 駅の近くに |
| ไกลจาก | klai jàak | 〜から遠い | ไกลจากเมือง klai jàak mɯang 町から遠い |
| รอบ | rɔ̂ ɔp | 〜の周りに | รอบบ้าน rɔ̂ɔp bâan 家の周りに |
| ริม | rim | 〜のふちに・〜に面して | ริมทะเล rim thá-lee 海辺に |
⚠ ใกล้ と ไกล ── 声調だけが違う危険な2語
ใกล้klâi (近い)と ไกลklai (遠い)は、意味が正反対なのに音がそっくりです。違いは声調ひとつだけ。
綴りから検算しましょう。ใกล้ は中子音 ก + ไม้โท なので下声、ไกล は中子音の生音節で声調記号なしなので平声です。「駅は近いですか」のつもりで平声に言うと「駅は遠いですか」になります。道を尋ねる場面でいちばん困る取り違えですから、口に出して練習してください。
駅は近いですか。
駅は遠いですか。
あとは名詞を1つ決め、位置語を入れ替えるだけです。机ひとつを基準にするだけで、何通りもの位置が言えます。
まとめ ① 位置の語
- 位置語は名詞の前に置く。日本語の助詞と順序が逆。
- 位置語はもともと名詞。本来の形は〔ข้างkhâang +位置語+ของkhɔ̌ɔng +名詞〕で、日常では両端が落ちる。
- 単独で「上のほう・外側」と言うときは ข้างkhâang を残す(ข้างบนkhâang-bon ข้างนอกkhâang-nɔ̂ɔk )。
- ใกล้klâi (近い・下声)と ไกลklai (遠い・平声)は声調で区別する。
30-4方向を表す語 ── もとは動詞
方向の語も同じ発想です。ほとんどが動詞で、動詞のうしろに連ねて方向を添えます。第29章で学んだ連続動詞構文が、そのまま前置詞の役を果たしていると考えてください。
| タイ語 | 発音 | もとの動詞の意味 | 方向としての働き |
|---|---|---|---|
| ไป | pai | 行く | 話し手から遠ざかる向き |
| มา | maa | 来る | 話し手に近づく向き |
| ถึง | thɯ̌ng | 到達する | 〜まで(到達点) |
| จาก | jàak | 離れる | 〜から(起点) |
| เข้า | khâo | 入る | 〜の中へ |
| ออก | ɔ̀ɔk | 出る | 〜の外へ |
| ขึ้น | khɯ̂ n | 上がる・乗る | 上へ |
| ลง | long | 下がる・降りる | 下へ |
| ผ่าน | phàan | 通り過ぎる | 〜を通って |
| ตาม | taam | 従う・ついていく | 〜に沿って |
| ทาง | thaang | 道(名詞) | 〜経由で・〜のほうへ |
| ข้าม | khâam | 渡る | 〜を越えて |
เข้าไป と ออกมา ── 方向は2段重ねになる
タイ語では「入る」と「話し手から遠ざかる」を重ねて เข้าไปkhâo pai (入っていく)、「出る」と「話し手に近づく」を重ねて ออกมาɔ̀ɔk maa (出てくる)と言います。日本語の「入っていく」「出てくる」とまったく同じ発想です。
彼は部屋の中へ歩いて入っていった。
彼は家から走って出てきた。
30-5อยู่ との組み合わせ/前置詞を省く場合
อยู่ + 位置語
「〜にある・〜にいる」と存在を言うときは、動詞 อยู่yùu を前に立てます。yùu だけでは場所を特定できないので、そのうしろに位置語を足すのが基本形です。
| อยู่ | + | ที่/ใน/บน | + | 場所の名詞 |
| ある・いる | 位置語 |
存在文の骨格。位置語を入れ替えるだけで細かい位置が言える。
会話では อยู่yùu だけで場所を答えることもできます。yùubâan(家にいる)のように、thîi を落とすのは口語ではごく普通
อยู่บ้าน
です。
移動動詞のあとでは前置詞を省く
ここは日本語話者が余計に付けてしまいやすいところです。ไปpai มาmaa กลับklàp など移動を表す動詞のうしろでは、場
ただし移動先が「中」や「上」であることをはっきり言いたいときは、位置語を入れます。
日本語の「〜に」は、存在(学校にいる)と移動先(学校に行く)の両方に使えます。タイ語はこの2つをはっきり分けます。
✓ 私は学校にいる。(存在 → thîi が要る)
✓ 私は学校に行く。(移動 → 前置詞なし)
覚え方は単純です。動きが止まっているときは ที่thîi 、動いているときは何も要らない。
30-6日本語の「に・で・へ」から引く
作文のときは、日本語の助詞からタイ語を引けると速くなります。位置語そのものは前の一覧に譲り、ここでは助詞の対応だけを見ておきましょう。
| 日本語 | タイ語 | 例 |
|---|---|---|
| 〜で(動作の場所) | ที่ | ทำงานที่บริษัท tham-ngaan thîi bɔɔ-rí-sàt |
| 〜に(存在の場所) | อยู่ที่/อยู่ใน | อยู่ที่บ้าน yùu thîi bâan |
| 〜へ・〜に(移動先) | (前置詞なし) | ไปตลาด pai tà-làat |
| 〜から(起点) | จาก | มาจากญี่ปุ่น maa jàak yîi-pùn |
| 〜まで(到達点) | ถึง | ไปถึงสถานี pai thɯ̌ ng sà-thǎa-nii |
| 〜の中に | ใน | ในกระเป๋า nai krà-pǎo |
| 〜の上に | บน | บนเตียง bon tiang |
| 〜の下に | ใต้ | ใต้โต๊ะ tâai tó |
| 〜に沿って | ตาม | ตามถนน taam thà-nǒn |
| 〜を通って💼 | ผ่าน | ผ่านสวน phàan sǔan |
| 〜経由で | ทาง | ทางกรุงเทพ thaang krung-thêep |
取引先の場所を説明する場面は必ず来ます。次の型を覚えておくと、そのまま使えます。
会社はAビルの10階にあります。
アソーク駅のすぐ近くです。
銀行の向かいです。
ตรงข้ามtrong-khâam は กับkàp を入れても入れなくても構いません。入れたほうがやや丁寧に響きます。
30-7会話で確かめる
会話1 道をたずねる
| ケン | コートートクラップサターニーユーティーナイクラップ |
すみません、駅はどこですか。
通行人ドゥーントロンパイタームタノンニーカ
この道に沿ってまっすぐ歩いてください。
| 通行人 | トゥンシーイェークレーオリアオクワーカ |
交差点まで来たら、右に曲がってください。
駅は左側です。銀行の向かいですよ。
遠いですか。
遠くありません。歩いて5分ほどです。
どうもありがとうございます。
道案内に要る語はごくわずかです。ตรงไปtrong pai (まっすぐ)、เลี้ยวซ้ายlíao sáai (左折)、เลี้ยวขวาlíao khwǎa (右折)、ถึงthɯ̌ ng (〜まで来たら)、ตรงข้ามtrong-khâam (向かい)。この5語で大半の説明が聞き取れます。
ซอย ── バンコクの住所を読む鍵
タイの都市の住所には ซอยsɔɔi という語が必ず出てきます。大通り ถนนthà-nǒn から枝分かれする路地のことで、番号が付いています。路地の入口は ปากซอยpàak-sɔɔi (ソイの口)、奥は ท้ายซอยtháai-sɔɔi (ソイの尻尾)。タク
まとめ ② 方向と省略
- 方向語はもとが動詞。動詞のうしろに連ねて使う(เดินเข้าdəən khâo ออกจากɔ̀ɔk jàak )。
- 起点は จากjàak 、到達点は ถึงthɯ̌ ng 。
- 存在は อยู่yùu +位置語+名詞。
- 移動動詞(ไปpai มาmaa กลับklàp )のあとでは前置詞を置かない。
- 「入っていく・出てくる」は เข้าไปkhâo pai ออกมาɔ̀ɔk maa と2段に重ねる。