授受と方向 ให้・มา・ไป
第3部 ・ 第28章
ให้ hâi の3つの働き(本動詞・受益・使役)を文型で区別でき、「〜てあげる/〜てくれる/〜てもらう」をタイ語で言える。มา maa ・ไป pai を動詞に付けて方向を示せる。
「あげる・くれる・もらう」。日本語ではこの3語を無意識に使い分けていますが、タイ語にはこの区別がありません。そのかわり、誰から誰へを語順で示さなければなりません。さらに タイ語は「持ってくる/持っていく」を動詞のうしろの
มาmaa ・ไปpai で表します。この章は、日本人学習者が最も混乱する領域です。急がずに進みましょう。
この章のゴール:ให้hâi の3つの働き(本動詞・受益・使役)を文型で区別でき、「〜てあげる/〜てくれる/〜てもらう」をタイ語で言える。มาmaa ・ไปpai を動詞に付けて方向を示せる。
28-1日本語の「あげる・くれる・もらう」という壁
まず、日本語がどれだけ特殊かを確認しておきましょう。「私は友達に本をあげた」「友達が私に本をくれた」「私は友達に本をもらった」── 起きている出来事はどれも同じ「AがBに本を渡した」なのに、日本語は話し手がどちら側に立つかで動詞そのものを取り替えます。世界の言語で見ると、これはかなり珍しい仕組みです。タイ語には、この視点の区別がありません。「与える」はどの場合も ให้hâi ひとつです。かわりに、誰が与えて誰が受け取るのかを語順だけで示します。日本語話者がつまずくのは、まさにここです。「くれる」と言いたい気持ちが先に立って、語順が崩れてしまうのです。
覚える動詞が1つで済むのですから、本来これはタイ語のほうが簡単です。問題は、日本語話者が「くれる」と言おうとした瞬間に、頭の中で主語が「友達が」ではなく「私が」に化けてしまうことです。対策はひとつ。タイ語を作るときは必ず「渡した人」から書き始めると決めてしまうことです。「友達がくれた」→ 渡した人
28-2ให้ の3つの顔
ให้hâi はタイ語で最も働きの多い語のひとつです。文の中のどこに立つかで、3つのまったく違う意味になります。まず全
体像を見てください。
| 顔 | 形 | 意味 |
|---|---|---|
| ① 本動詞 | ให้+人+物 / ให้+物+แก่/กับ+人 | 与える・あげる・くれる |
| ② 受益 | 動詞(+目的語)+ให้+人 | 〜してあげる・〜してくれる |
| ③ 使役 | ให้+人+動詞 | 〜させる・〜するように言う |
見分け方は単純です。ให้ のうしろに何が来るかを見ます。〔人+物〕なら①、〔人〕で終われば②、〔人+動詞〕なら③です。
① 本動詞の ให้ ── 与える
| ผม | + | ให้ | + | เขา | + | เงิน |
| 与える人 | 与える | 受け手 | 物 |
①本動詞。〔私 与える 彼 お金〕=私は彼にお金をあげる。受け手が先、物があと。
もうひとつ、物を先に言って、受け手を前置詞で示す形もあります。改まった場面では แก่kɛ̀ɛ 、日常会話では กับkàp を使います。
⚠ ให้+物+人 と並べると誤解される
「彼の本」というひとかたまりに読めてしまい、「彼の本をあげる(誰に?)」という宙に浮いた文になります。
✗ 私は彼に本をあげる。
✓ 私は彼に本をあげる。
✓ 私は彼に本をあげる。
物がお金のように「所有されようがない」語なら hâi ngən khǎo でも通じますが、迷ったら〔ให้+人+物〕か〔ให้+物+กับ+人〕にしておけば必ず伝わります。
② 受益の ให้ ──「〜してあげる/〜してくれる」
動詞のうしろに ให้hâi +人 を置くと、「その人のために〜する」という意味になります。日本語の「〜てあげる/〜てくれる」に当たりますが、ここでもあげる・くれるの区別はありません。
| ผม | + | ซื้อ | + | ของ | + | ให้ | + | เขา |
| する人 | 動詞 | 目的語 | 受益 | 受け手 |
②受益。動詞のあとの ให้ は「〜のために」。うしろに動詞は続かない。
目的語がある動詞は〔動詞+目的語+ให้+人〕
わせる)に読めてしまいます。目的語は ให้ の前。〔買う → ごはん → ให้ → 友達〕の順です。この順序を「してから、渡す」という時間の流れで覚えると忘れません。
③ 使役の ให้ ──「〜させる」
ให้hâi のうしろが〔人+動詞〕になると、「その人に〜させる/〜するように言う」という使役の意味になります。詳しく
は第40章で扱いますので、ここでは形の見分けだけ確認します。
| หัวหน้า | + | ให้ | + | ผม | + | ไป | + | ประชุม |
| させる人 | 使役 | する人 | 動詞 | 目的語 |
③使役。ให้ のあとが〔人+動詞〕なら「〜させる」。
の見分け方
- ให้ のうしろを見る。〔人+物〕なら①与える、〔人〕で終われば②〜してあげる、〔人+動詞〕なら③〜させる。
- ให้ の前を見る。ให้ の前に動詞があれば②か③、なければ①。
- ①でも②でも、「あげる」と「くれる」は同じ形。区別するのは主語の位置だけ。
28-3「もらう」を言う ── ได้・ได้รับ・รับ
「もらう」は受け手を主語にした言い方です。タイ語ではได้dâai (得る)を使うのが基本で、そこに「どこから」を
จากjàak (〜から)で足します。
| タイ語 | 発音 | 使う場面 |
|---|---|---|
| ได้ | dâai | いちばん普通。話しことば全般 |
| ได้รับ | dâai-ráp | 改まった場面・書類・ビジネス |
| รับ | ráp | 受け取る動作そのもの(手に取る・受領する) |
⚠ ได้ は前に来るか後ろに来るかで意味が変わる
第21章・第25章で学んだとおり、ได้dâai は位置によって働きが変わります。ここで整理しておきましょう。
- ได้+名詞=もらう・得る。dâaingən(お金をもらう)
ได้เงิน
- ได้+動詞=〜した(過去の事実)。dâaipai(行った)
ได้ไป
- 動詞+ได้=〜できる。paidâai(行ける)
ไปได้
を見るのがタイ語の読み方です。
日本語の「手伝ってもらった」「教えてもらった」は、動作をするのは相手なのに主語が「私」になる、非常に日本語的な言い方です。タイ語にこれを直接写す形はありません。次の2つのどちらかに置き換えます。
- 相手を主語にして受益の ให้ を使う:phɯ̂ ansɔ̌ɔnhâiphǒm(友達が教えてくれた=教えてもらった)
เพื่อนสอนให้ผม
- 使役の ให้ を使う:phǒmhâiphɯ̂ ansɔ̌ɔn(私は友達に教えさせた=教えてもらった)
ผมให้เพื่อนสอน
前者は「相手の好意」、後者は「私が頼んだ」というニュアンスです。日本語の「〜てもらう」はこの両方をまたいでいるので、どちらの気持ちなのかを自分で決めてからタイ語にします。
28-4方向を示す มา と ไป
ここからは方向の話です。มาmaa (来る)と ไปpai (行く)は、それ自体が動詞ですが、ほかの動詞のうしろに付いて方向を示す働きも持ちます。これを方向補助動詞と呼びます。
| 動詞 | + | มา | ⇒ | 話し手に近づく |
maa
動詞+ไป なら話し手から遠ざかる。基準は常に「話し手のいる場所」。
基準はいつも話し手です。動作の結果として物や人が話し手に近づくなら มาmaa 、遠ざかるなら ไปpai 。日本語の「〜てくる/〜ていく」とほぼ同じ発想ですから、ここは比較的なじみやすいところです。
| 動詞 | +มา(近づく) | +ไป(遠ざかる) |
|---|---|---|
| เอา ao 取る | เอามา ao maa 持ってくる | เอาไป ao pai 持っていく |
| ส่ง sòng 送る | ส่งมา sòng maa 送ってくる | ส่งไป sòng pai 送っていく |
| กลับ klàp 戻る | กลับมา klàp maa 帰ってくる | กลับไป klàp pai 帰っていく |
| เข้า khâo 入る | เข้ามา khâo maa 入ってくる | เข้าไป khâo pai 入っていく |
| ออก ɔ̀ɔk 出る | ออกมา ɔ̀ɔk maa 出てくる | ออกไป ɔ̀ɔk pai 出ていく |
| 動詞 | +มา(近づく) | +ไป(遠ざかる) |
|---|---|---|
| ขึ้น khɯ̂ n 上がる | ขึ้นมา khɯ̂ n maa 上がってくる | ขึ้นไป khɯ̂ n pai 上がっていく |
| ลง long 下りる | ลงมา long maa 下りてくる | ลงไป long pai 下りていく |
| พา phaa 連れる | พามา phaa maa 連れてくる | พาไป phaa pai 連れていく |
| ซื้อ sɯ́ ɯ 買う | ซื้อมา sɯ́ ɯ maa 買ってくる | ซื้อไป sɯ́ ɯ pai 買っていく |
| เดิน dəən 歩く | เดินมา dəən maa 歩いてくる | เดินไป dəən pai 歩いていく |
⚠ 同じ日本語「送る」でも มา と ไป で正反対
きません。
28-5เอา の使い方と「〜てくる/〜ていく」の時間的用法
เอา ── 取る・持つ・要る
เอาao は「取る・持つ」という動詞ですが、それ単独で「(これを)もらう・要る」という意味でもよく使われます。買
い物では必須の語です。
そして เอาao +物+มาmaa /ไปpai が「持ってくる/持っていく」です。タイ語には「持ってくる」という1語の動詞がなく、この組み立てで表します。
| เอา | + | 物 | + | มา / ไป |
| 取る | 方向 |
「持ってくる/持っていく」は〔取る+物+方向〕の3語で作る。
時間の「〜てきた」── 動詞+มา
มาmaa には、空間ではなく時間の方向を示す用法もあります。「過去のある時点から今まで、ずっと〜してきた」という
意味です。日本語の「〜てきた」とぴたりと重なります。
逆に ไปpai を使うと「これから先へ続く」という意味になります。
ขึ้น と ลง ── 増減の方向
ขึ้นkhɯ̂ n (上がる)と ลงlong (下がる)も、มา・ไป と同じように動詞や形容詞のうしろに付いて「変化の向き」を示しま
ろに足す」という発想が非常に強い言語だと分かります。
28-6組み合わせる ── ซื้อมาให้ 型と日本語逆引き
ここまでの部品を組み合わせると、日本語の複雑な「〜てきてあげる」も作れます。順序は〔動作〕→〔方向〕→〔受け手〕。日本語と同じ並びなので、覚えやすいはずです。
| ซื้อ | + | มา | + | ให้ | + | เพื่อน |
| 買う | てくる | てあげる | 友達に |
〔動作〕→〔方向〕→〔受け手〕の順に足していく。
| 日本語 | タイ語の形 | 例 |
|---|---|---|
| 〜てあげる | 動詞+ให้+人 | ทำให้เพื่อน tham hâi phɯ̂ an |
| 〜てくれる | (同じ形。主語が相手) | เพื่อนทำให้ผม phɯ̂ an tham hâi phǒm |
| 〜てもらう | 相手を主語にする/ให้+人+動詞 | ให้เพื่อนทำ hâi phɯ̂ an tham |
| 〜てくる(方向) | 動詞+มา | ส่งมา sòng maa |
| 〜ていく(方向) | 動詞+ไป | ส่งไป sòng pai |
| 〜てきた(時間) | 動詞+มา(+ตลอด) | ทำมาตลอด tham maa tà-lɔ̀ɔt |
| 〜ていく(時間) | 動詞+ต่อไป | ทำต่อไป tham tɔ̀ɔ pai |
| 持ってくる/いく | เอา+物+มา/ไป | เอาของมา ao khɔ̌ɔng maa |
| 〜てきてあげる | 動詞+มา+ให้+人 | ซื้อมาให้ sɯ́ ɯ maa hâi |
会話1 おみやげをもらう
| ナム | ニーコーンファークヂャークチエンマイカアオマーハイクンケーンカ |
これチェンマイのおみやげです。ケンさんに持ってきました。
ありがとうございます。チェンマイのおみやげはもらったことがありません。
友達が私に2つ買ってきてくれたので、1つ持ってきたんです。
とてもうれしいです。今度は私も日本のおみやげを買ってきてあげますね。
タイの職場では、旅行のおみやげ ของฝากkhɔ̌ɔng-fàak やちょっとした食べ物を配る習慣が日本以上に日常的です。もらった
作を มา と ให้ でなぞって返すと喜ばれます。目上の人におごってもらったら เลี้ยงlíang (ごちそうする)を使って khɔ̀ɔp-khun
ขอบคุณ
会話2 書類を送る・サンプルを持ってくる
ケンさん、顧客に書類を送っておいてください。
メールで送りますか、それとも先方の会社へ持っていきますか。
先にメールで送って、明日、原本を持っていってあげてください。
はい。では商品サンプルはどうしましょうか。
午後、会議室へ持ってきてください。顧客が見に来ます。
承知しました。昨日、先方が注文書も送ってきています。
いいですね。私にも持ってきて見せてください。
かしこまりました。すぐお持ちします。