依頼・命令・勧誘・禁止
第3部 ・ 第27章
ช่วย chûai (チュアイ)…หน่อย nɔ̀i (ノイ) の依頼の型を自在に使え、ขอ khɔ̌ɔ (コー) の2用法を区別でき、相手(部下・同僚・取引先・目上)に応じて丁寧さの段階を選べる。
タイ語には命令形という形がありません。動詞は「行け」も「行きます」も同じ ไปpai のままです。ではどうやって、ぶっきらぼうな命令と、丁寧なお願いを言い分けるのか。答えは動詞の前に置く語と、文末に置く語です。この章で、その組み合わせを丸ごと手に入れます。
この章のゴール:ช่วยchûai (チュアイ)…หน่อยnɔ̀i (ノイ) の依頼の型を自在に使え、ขอkhɔ̌ɔ (コー) の2用法を区別でき、相手(部下・同僚・取引先・目上)に応じて丁寧さの段階を選べる。
27-1命令形がない言語で、丁寧さはどこから来るか
日本語には「行け/行きなさい/行ってください/お越しください」と、動詞そのものを変える手段があります。英語にもGo. / Please go. / Could you go? という段階があります。タイ語の動詞は一切変わりません。ไป は永遠に ไป です。そのかわり、動詞の前に「前置きの語」を置き、文末に「調子を決める語」を置くことで、ぶっきらぼうから最上級の丁寧さまでを作り分けます。
| 前置きの語 | + | 動詞 | + | 目的語 | + | 文末の語 | + | ครับ / ค่ะ |
| ช่วย / กรุณา / ขอ | หน่อย / สิ / เถอะ / นะ |
動詞は変えず、前後を着せ替える。これがタイ語の「命令形」の代わり。
日本語の「〜てください」は、店員への注文にも、部下への指示にも、取引先へのお願いにも使える万能表現です。この便利さに慣れていると、タイ語で必ずどこかを踏み外します。タイ語では、頼んでいる内容が相手に手間をかけるかで語が変わります。相手に労を取らせるなら ช่วยchûai (助ける)を使い、自分が何かをもらう・させてもらうなら ขอkhɔ̌ɔ (乞う)を使います。この使い分けが本章の骨格です。
27-2依頼 ── ช่วย…หน่อย の型
依頼の中心は ช่วยchûai です。もともと「助ける」という動詞で、「〜するのを手伝ってください」から依頼の標識になりました。低子音 ช + ไม้เอก なので下声です。そして文末には หน่อยnɔ̀i(少し)を添えます。「ちょっとだけ」と負担を小さく見せる語で、これがあるかないかで印象が大きく変わります。
| ช่วย | + | 動詞 | + | 目的語 | + | หน่อย | + | ครับ / ค่ะ |
| 依頼の標識 | ちょっと |
最も汎用性の高い依頼の型。この5要素を丸ごと覚える。
疑問形にすると、さらに丁寧になる
文末を ได้ไหมdâai-mǎi (〜できますか)にすると、「できるかどうか」を相手に委ねる形になり、丁寧さが一段上がります。3つの形を並べて覚えましょう。
| 形 | 例 | 丁寧さ |
|---|---|---|
| ช่วย…หน่อย | ช่วยส่งหน่อยครับ | 丁寧(標準) |
| ช่วย…ได้ไหม | ช่วยส่งได้ไหมครับ | より丁寧(打診) |
| …หน่อยได้ไหม | ส่งหน่อยได้ไหมครับ | 丁寧・親しみあり |
| ช่วย…หน่อยได้ไหม | ช่วยส่งหน่อยได้ไหมครับ | 最も丁寧(全部乗せ) |
กรุณา・โปรด・รบกวน ── 硬い依頼
กรุณาkà-rú-naa は掲示・アナウンス・改まった場面の「〜してください」。会話で使うと少し儀式ばって聞こえ
ます。โปรดpròot はさらに硬く、pròotrá-wang(ご注意ください)のように駅や機内の放送、書きことばに現れ
โปรดระวัง
ます。
一方 รบกวนróp-kuan は「お邪魔する・煩わせる」という動詞で、依頼の頭に置いて「恐れ入りますが」を作ります。会話でとても自然に使え、日本人が一つ覚えておくと重宝します。
27-3要求 ── ขอ の2つの用法
ขอkhɔ̌ɔ は「乞う」。高子音 ข の生音節なので上声です。後ろに何が来るかで意味が変わります。ここは必ず区別し
てください。
| ขอ | + | 名詞 | / | ขอ | + | 動詞 |
| ① 〜をください | ② 〜させてください |
後ろが名詞なら「もらう」、動詞なら「許可を求める」。どちらも自分が受け取る側。
① ขอ+名詞 ──「〜をください」
② ขอ+動詞 ──「〜させてください」
⚠ ขอ と ช่วย を取り違えない
ขอkhɔ̌ɔ は自分が受け取るとき、ช่วยchûai は相手に動いてもらうときです。
「窓を開けてください」は相手に動いてもらうので chûaipə̀ətnâa-tàangnɔ̀ikhráp。ここで ขอเปิดหน้าต่าง と言うと「(私
ช่วยเปิดหน้าต่างหน่อยครับ
が)窓を開けさせてください」になり、自分が立ち上がることになります。逆に店で「水をください」を ช่วยเอาน้ำมาหน่อย と長く言う必要はありません。khɔ̌ɔnáamkhráp で十分丁寧です。
ขอน้ำครับ
27-4命令と指示 ── 文末の สิ・ซิ・เถอะ・นะ
動詞をそのまま言えば命令になりますが、それだけではかなりぶっきらぼうです。親でも上司でも、素の動詞だけで指示することは多くありません。文末に一語添えるのが普通です。
| 文末語 | 発音 | 働き | 相手 |
|---|---|---|---|
| (なし) | — | 素の命令。強い・きつい | ごく親しい間柄・緊急時 |
| สิ / ซิ | sì / sí | 促し。「〜しなよ」 | 友人・年下 |
| เถอะ | thə | 勧め・誘い。「〜しよう/〜しなさいよ」 | 友人・部下 |
| นะ | ná | やわらげ・念押し。「〜してね」 | 誰にでも(万能) |
| หน่อย | nɔ̀i | 負担を小さく見せる | 誰にでも |
なお สิ は高子音+短母音の死音節なので、規則どおりなら低声 sì です。ところが実際の会話では強く高く発音されることが多く、そのため ซิ(低子音+短母音の死音節=高声 sí)という綴りも広く使われます。意味は同じで、書くときは สิ が標準です。
⚠ นะ を付けすぎても失礼にはならない
日本人が指示を出すとき、いちばん安全なのは นะná です。「〜してね」に当たり、命令を依頼に近づけます。付けすぎて怒られることはまずありません。ただし นะná は丁寧語の前に置きます。ครับนะ ではなく นะครับ。同様に ค่ะนะ ではなく นะคะ です。女性は นะná のあとが
คะkhá になる点にも注意してください。
27-5勧誘 ── กัน・กันเถอะ・เชิญ・ลอง…ดู
「一緒に〜しよう」は กันkan(互いに・一緒に)を文末に置きます。動詞の後ろです。
ลองlɔɔng +動詞+ดูduu は「試しに〜してみる」。〔試す+動詞+見る〕という組み立てで、日本語の「〜してみる」と
行為にも使えます。
27-6禁止 ── อย่า・ห้าม・ไม่ควร・…ไม่ได้
禁止は強さの順に4段階あります。会話で最もよく使うのは อย่าyàa、掲示は ห้ามhâam です。
| 形 | 発音 | 強さ | 使う場所 |
|---|---|---|---|
| ห้าม+動詞 | hâam | 最も強い | 掲示・規則・法令 |
| อย่า+動詞 | yàa | 強い | 会話での禁止・忠告 |
| 動詞+ไม่ได้ | mâi dâai | 中 | 「できません」=不可の説明 |
| ไม่ควร+動詞 | mâi khuan | 弱い | やわらかい助言(第26章) |
① 文末に นะná を足す。yàalɯɯmnákhráp。
อย่าลืมนะครับ
③ ไม่ควรmâi khuan で「〜しないほうが」と助言に変える。タイの職場では、相手の面目をつぶさないことが何より重視されます。禁止をそのまま言い切るより、①〜③のどれかを使うほうが結果的にうまくいきます。
27-7丁寧さの階梯 ── 誰に、どう言うか
ここまでの語を、丁寧さの順に一枚の表にまとめます。「同じ内容をどう言い換えるか」の物差しとして使ってください。例はすべて「これを送ってください」です。
| 段階 | タイ語 | 発音 | 使う相手 |
|---|---|---|---|
| ぶっきらぼう | ส่งอันนี้ | sòng an-níi | ごく親しい友人。仕事では使わない |
| くだけた | ส่งอันนี้สิ | sòng an-níi sì | 友人・親しい年下 |
| 中立 | ส่งอันนี้หน่อย | sòng an-níi nɔ̀i | 同僚・親しい部下 |
| 丁寧 | ช่วยส่งอันนี้หน่อยครับ | chûai sòng an-níi nɔ̀i khráp | 同僚・部下・店員(標準) |
| より丁寧 | ช่วยส่งอันนี้หน่อยได้ไหมครับ | chûai sòng an-níi nɔ̀i dâai-mǎi khráp | 取引先・年上の同僚 |
| 非常に丁寧 | รบกวนช่วยส่งอันนี้หน่อยนะครับ | róp-kuan chûai sòng an-níi nɔ̀i ná khráp | 目上・重要な取引先 |
| 掲示・書面 | กรุณาส่งเอกสาร | kà-rú-naa sòng èek-kà-sǎan | 不特定多数・文書 |
① ช่วยchûai と หน่อยnɔ̀i を落とす。「送ってください」のつもりで ส่ง だけ言うと、命令になります。日本語の「送って」は語尾の調子で丁寧にできますが、タイ語は語を足さないと丁寧になりません。② 相手に ต้องtɔ̂ng を使う。khuntɔ̂ngsòngwan-níi(今日送らなければなりません)は、義務を課す言い方です。取引先に言え
คุณต้องส่งวันนี้
ば角が立ちます。③ ครับkhráp / ค่ะkhâ を省く。これが最も目立ちます。日本語の「です・ます」を全部外した状態と同じです。
部下・後輩へchûaithamnɔ̀inákhráp。หน่อยnɔ̀i と นะná を付ければ、指示でも押しつけになりません。
ช่วยทำหน่อยนะครับ
取引先へróp-kuanchûaiyɯɯn-yannɔ̀inákhráp。รบกวนróp-kuan を頭に置くのが決め手です。
รบกวนช่วยยืนยันหน่อยนะครับ
目上・役員へ 依頼そのものを避け、願望の形(第26章の อยากให้yàak-hâi )で述べるか、ขอkhɔ̌ɔ を使って自分が受け取る形に言い換えます。
会話1 社内での依頼
| ケン | クンノッククラップロップクアンチュアイドゥーエーカサーンニーノイダーイマイクラップ |
ノックさん、恐れ入りますが、この書類をちょっと見ていただけますか。
ノックダーイカコーウェーラーサックチュアモーンナカ
いいですよ。1時間ほどいただけますか。
| ケン | ダーイクラップマイトンリープクラップ |
大丈夫です。急がなくていいですよ。
ノックレーオトンソンハイルーッカームアライカ
それで、いつ顧客に送らなければなりませんか。
| ケン | プルンニーチャオクラップヤールームサイラーカーナクラップ |
明日の朝です。値段を入れるのを忘れないでくださいね。
| ノック | カディアオタムセットレーオヂャヂェーンナカ |
はい。終わったらお知らせしますね。会話2 店での注文
| 店員 | ラップアライディーカ |
何になさいますか。
| ケン | コーメーヌー | ノイクラップ |
メニューをください。
| 店員 | チューンカ |
どうぞ。
| ケン | コーパッタイヌンヂャーンカップナームヌンケーオクラップ |
パッタイを1皿と、水を1杯ください。
| 店員 | ペットダーイマイカ |
辛くても大丈夫ですか。
| ケン | チュアイタムマイペットノイダーイマイクラップ |
辛くしないでいただけますか。
| 店員 | ダーイカカルナーローサックルーナカ |
かしこまりました。少々お待ちくださいね。
| ケン | コーバイセットドゥアイナクラップ |
領収書もお願いしますね。
依頼と命令のまとめ
- タイ語に命令形はない。動詞の前の語+文末の語で丁寧さを作る。
- 相手に動いてもらう=ช่วยchûai +動詞+หน่อยnɔ̀i 。自分が受け取る=ขอkhɔ̌ɔ +名詞/動詞。
- ได้ไหมdâai-mǎi を足すと丁寧さが一段上がる。รบกวนróp-kuan を頭に置くとさらに上がる。
- 掲示・書面は กรุณาkà-rú-naa /โปรดpròot 、禁止は ห้ามhâam 。
- 会話の禁止は อย่าyàa +動詞。นะná を添えるとやわらぐ。
迷ったら使える3つの型
เกรงใจ と「察してもらう」文化
タイ人が依頼を切り出すとき、いきなり本題に入らず รบกวนróp-kuan (お邪魔します)や mâisâapwâa(〜かどうか存じ
ไม่ทราบว่า…
ませんが)と前置きするのは、เกรงใจkreeng-jai (相手に負担をかけたくない気持ち)の表れです。日本語の「恐れ入りますが」「お忙しいところ恐縮ですが」とほぼ同じ働きをします。逆に、頼まれた側が断るときも直接 ไม่ได้mâi dâai (できません)とは言わず、「ちょっと難しいかもしれませんね」のように濁します。第26章の推量表現が、ここでは断りの道具として働くわけです。この二つの章はセットで身につけてください。