助動詞(2)義務・願望・推量
第3部 ・ 第26章
ต้อง tɔ̂ng (トン)・ควร khuan (クアン)・อยาก yàak (ヤーク)・คงจะ khong-jà (コンヂャ) などを動詞の前に正しく置け、義務・助言・願望・推量を言い分けられる。推量の確信度を6段階で使い分けられる。
前章の可能を表す語は、どれも動詞の後ろにありました。この章で扱う助動詞は逆に、すべて動詞の前に立ちます。「しなければならない」「したほうがいい」「したい」「かもしれない」──日本語では文末に来るものが、タイ語では動詞の手前に並ぶのです。この位置の違いを最初に体に入れてしまいましょう。
この章のゴール:ต้องtɔ̂ng (トン)・ควรkhuan (クアン)・อยากyàak (ヤーク)・คงจะkhong-jà (コンヂャ) などを動詞の前に正しく置け、義務・助言・願望・推量を言い分けられる。推量の確信度を6段階で使い分けられる。
26-1助動詞は動詞の前に立つ ── 第25章との対比
第25章で学んだ可能の ได้dâai ・เป็นpen ・ไหวwǎi は、いずれも動詞(+目的語)のあとに置きました。〔私 話す タイ語できる〕という順です。ところがこの章の助動詞群は、すべて動詞の直前です。ここを混同すると通じません。まず語順を図で押さえます。
| 主語 | + | ต้อง / ควร / อยาก | + | 動詞 | + | 目的語 | + | ได้ |
| 助動詞 | 可能(後ろ) |
義務・願望・推量の助動詞は動詞の前。可能の ได้ だけが後ろに残る。両者は同居できる。
日本語では「話さなければならない」「話したい」「話せる」「話すだろう」と、意味を足す部分はすべて動詞のあとに付きます。だから日本語話者は、タイ語でもつい動詞の後ろに助動詞を置いてしまいます。タイ語では可能だけが後ろで、それ以外はほぼ前です。「前が原則、可能だけ例外」と覚えると整理できます。理由は歴史的
26-2義務と必要 ── ต้อง・จำเป็นต้อง・ไม่ต้อง・ห้าม
ต้องtɔ̂ng は「〜しなければならない」。中子音 ต に ไม้โท が付くので下声です。これは動詞の前に置くだけで、ほか
に何も要りません。
より改まった、あるいは「必要性がある」という理屈を強調する言い方が จำเป็นต้องjam-pen-tɔ̂ng です。
จำเป็นjam-pen だけで「必要だ」という形容詞(状態動詞)としても使えます。
ไม่ต้อง は「禁止」ではない
ここが本章最大の注意点です。ไม่ต้องmâi-tɔ̂ngは「〜しなければならない」の否定、つまり「〜しなくてよい・〜するには及ばない」です。「〜してはいけない」ではありません。
⚠ ไม่ต้อง を「禁止」のつもりで使わない
日本語の「〜しなくていい」は、言い方によっては「するな」の遠回しな表現になります。しかしタイ語の ไม่ต้องmâi-tɔ̂ng は純粋に「義務がない」という意味しか持ちません。
取られます。禁止は必ず ห้ามhâam か อย่าyàa(第27章)を使ってください。
ห้ามhâam は「禁じる」という動詞で、そのまま「〜するな」の掲示・規則の表現になります。高子音 ห + ไม้โท な
ので下声です。
義務まわりの4語
- ต้องtɔ̂ng +動詞 … 〜しなければならない(最も一般的)
- จำเป็นต้องjam-pen-tɔ̂ng +動詞 … 〜せざるを得ない(改まった・理由を含意)
- ไม่ต้องmâi-tɔ̂ng +動詞 … 〜しなくてよい(禁止ではない)
- ห้ามhâam +動詞 … 〜してはいけない(禁止・掲示)
26-3助言と当為 ── ควร・ควรจะ・น่าจะ・ไม่ควร
ควรkhuan は「〜すべきだ」。低子音 ค の生音節で声調記号がないので平声です。ต้องtɔ̂ng より義務の強さが下が
り、「そうするのが筋だ」という判断を表します。
話しことばでは ควรจะkhuan-jà と จะjà を添える形がよく使われます。意味はほとんど変わらず、少し柔らかくなります。
否定は ไม่ควรmâi-khuan 「〜すべきでない」。ห้ามhâam ほど強くない、やわらかい禁止として非常に便利です。
น่าจะ ── 「したほうがいい」と「〜のはずだ」の二役
น่าจะnâa-jà は日本人が最も重宝する語のひとつです。น は低子音、ไม้เอก が付くので下声。用法が2つあります。
迷ったら น่าจะ
ต้องtɔ̂ng は強すぎ、ควรkhuan も少し説教くさい──そんなときに น่าจะnâa-jà を使えば、まず角が立ちません。日本語の
「〜したらどうでしょう」に近い距離感です。タイの職場では、目上でない相手にも直接的な指示を避ける傾向があります。น่าจะnâa-jà と、次章で学ぶ นะná を組み合わせ
26-4願望 ── อยาก・อยากได้・ต้องการ・อยากให้
อยากyàak は「〜したい」。後ろに来るのは必ず動詞です。อย は特殊な綴りで อ が導き、中子音扱いの死音節な
ので低声になります(第8章)。
ほしいものが名詞のときは อยากได้yàak-dâai を使います。〔ほしい+得る〕という組み立てです。อยากyàakの直後に名詞は置けません。
改まった場面・文書では ต้องการtɔ̂ng-kaan を使います。動詞にも名詞にも直接続けられる便利な語ですが、口語で多用すると硬く、ときに高圧的に響きます。
อยากให้+人+動詞 ── 「人に〜してほしい」
願望の相手が自分以外のときは、ให้hâi (〜させる・〜するように)をはさみます。語順は〔yàak hâi + 人 + 動詞〕。日本語の「AにBしてほしい」とちょうど対応します。
| ผม | + | อยากให้ | + | คุณ | + | ช่วย |
| 私 | 〜してほしい | 人 | 動詞 |
ให้ のあとに「してほしい相手」が来る。ここを抜かすと自分の願望になる。
26-5好き・嫌い ── ชอบ・ไม่ชอบ・เกลียด・รัก
好悪を表す語も動詞の前に置けます。後ろには動詞も名詞も来られる点が อยากyàak と違います。
| タイ語 | 発音 | 意味 | 強さ |
|---|---|---|---|
| รัก | rák | 愛する・大好きだ | ++ |
| ชอบ | chɔ̂ ɔp | 好きだ | + |
| ไม่ชอบ | mâi chɔ̂ ɔp | 好きでない | − |
| เกลียด | klìat | 嫌いだ・憎む | −− |
⚠ เกลียด は思ったより強い
เกลียดklìat は日本語の「嫌い」より語感が強く、「憎む」に近い場面もあります。仕事の場で人や取引先について使うと、
相当きつく響きます。やわらげたいときは ไม่ชอบmâi chɔ̂ɔp (好きではない)か ไม่ค่อยชอบmâi-khɔ̂i chɔ̂ɔp (あまり好きではない)で十分です。日本語で「ちょっと苦手で」と言う感覚に近いのは後者です。
26-6推量の階梯 ── どれくらい確信しているか
日本語の「かもしれない/だろう/はずだ/に違いない」に当たる語が、タイ語では確信度の順に並んでいます。ここを整理して覚えると、相手の話を聞くときの精度が一気に上がります。
| 確信度 | タイ語 | 発音 | 位置 | 日本語 |
|---|---|---|---|---|
| 100% | …แน่ๆ | nɛ̂ ɛ-nɛ̂ ɛ | 文末 | 絶対〜だ |
| 95% | ต้อง…แน่ | tɔ̂ ng … nɛ̂ ɛ | 前+文末 | 〜に違いない |
| 80% | คงจะ | khong-jà | 動詞の前 | 〜だろう |
| 70% | น่าจะ | nâa-jà | 動詞の前 | 〜のはずだ |
| 確信度 | タイ語 | 発音 | 位置 | 日本語 |
|---|---|---|---|---|
| 40% | อาจจะ | àat-jà | 動詞の前 | 〜かもしれない |
| 30% | คง…มั้ง | khong … máng | 前+文末 | 〜じゃないかなあ |
คง と คงจะ、อาจ と อาจจะ
คงkhong も อาจàat も単独で使えますが、話しことばでは จะjà を添えた คงจะkhong-jà ・อาจจะàat-jà のほうがはるかに多
く聞かれます。จะjà は未来を表す語(第22章)ですが、ここでは「まだ確定していない」という気分を添えるだけで、未来の意味はありません。逆に น่าจะnâa-jà の จะjà は分けられません。น่า 単独では「〜すべき価値がある」という別の語(น่าสนใจnâa-sǒn-jai 「興味深い」など)になります。
許可 ── ได้・ให้…ได้・อนุญาตให้
許可は可能と同じ ได้dâai を使います。第25章の「能力」との違いは文脈だけです。
「(人に)〜させてやる」と許可を与える側の言い方はให้hâiを使い、書きことば・規則では
อนุญาตให้à-nú-yâat-hâi になります。
26-7助動詞の共起 ── 並べられる順序
助動詞は重ねて使えますが、順序が決まっています。原則は「話し手の判断が外側、事実に近いものが内側」。推量 → 義務・願望 → 動詞、という並びです。
| คง / อาจ / น่า | + | จะ | + | ต้อง / ควร / อยาก | + | 動詞 | + | ได้ / ไหว |
| 推量 | 義務・願望 | 可能 |
推量が最も外側。可能だけが動詞の後ろに残る。
| 可否 | 並び | 意味・理由 |
|---|---|---|
| ○ | คงจะต้อง… | 「〜しなければならないだろう」推量が外側で正しい |
| ○ | อาจจะต้อง… | 「〜する必要があるかもしれない」 |
| 可否 | 並び | 意味・理由 |
|---|---|---|
| ○ | คงจะอยาก… | 「〜したいのだろう」 |
| ○ | น่าจะต้อง… | 「〜しなければならないはずだ」 |
| × | ต้องจะ… | 義務の内側に จะ は入らない |
| × | ต้องคงจะ… | 推量は義務より外側でなければならない |
| × | อยากต้อง… | 願望と義務は重ねない |
日本語からの逆引き表
| 日本語 | タイ語 | 位置 | 注意 |
|---|---|---|---|
| 〜しなければならない | ต้อง+動詞 | 前 | 硬い場面は จำเป็นต้อง |
| 〜しなくてよい | ไม่ต้อง+動詞 | 前 | 禁止ではない |
| 〜してはいけない | ห้าม+動詞 | 前 | 掲示・規則。会話は อย่า |
| 〜すべきだ | ควร(จะ)+動詞 | 前 | やや説教調 |
| 〜したほうがいい | น่าจะ+動詞 | 前 | 最も角が立たない |
| 〜したい | อยาก+動詞 | 前 | 後ろは必ず動詞 |
| 〜がほしい | อยากได้+名詞 | 前 | 名詞のときはこちら |
| 人に〜してほしい | อยากให้+人+動詞 | 前 | ให้ を落とさない |
| 〜だろう | คงจะ+動詞 | 前 | 確信度80%程度 |
| 〜かもしれない | อาจจะ+動詞 | 前 | 否定は อาจจะไม่ |
| 〜に違いない💼 | ต้อง+動詞+แน่ | 前+文末 | 文末の แน่ が鍵 |
| 〜してもよい | 動詞+ได้ | 後ろ | 可能と同形 |
取引先に ต้อง を使わない
日本語の「〜していただかなければなりません」をそのまま ต้องtɔ̂ng で言うと、タイ語では命令に聞こえます。相手に義務を課す語だからです。取引先や目上には、น่าจะnâa-jà (〜したほうが)、ช่วย…หน่อยchûai … nɔ̀i (〜していただけますか。第27章)、
อยากให้yàak-hâi (〜していただきたい)に置き換えます。ต้องtɔ̂ng は自分や自社を主語にするぶんには何の問題もありませ
ん。「弊社は納期を守らなければなりません」は、むしろ誠実に響きます。
会話1 納期の相談
| ケン | クンノッククラップンガーンニートンセットワンスックチャイマイクラップ |
ノックさん、この仕事は金曜に終わらせなければならないんですよね。
| ノック | カテーローンガーンコンヂャソンコーンチャーカ |
はい。でも工場からの納品はたぶん遅れると思います。
| ケン | ヤーンナンラオコンヂャトンヂェーンルーッカーコーンクラップ |
それなら、先に顧客に知らせなければならないでしょうね。
| ノック | カディチャンナーヂャトーワンニーカ |
はい。今日のうちに電話したほうがいいですね。
| ケン | クラップポムヤークハイクンボークワンティーマイドゥアイクラップ |
はい。新しい日程も伝えていただきたいです。
ノックマイトンフアンカディチャンヂャトルアッソープレーオヂェーンカ
ご心配なく。確認してからお知らせします。