指示詞と類別詞
第2部 ・ 第19章
นี่ nîi (ニー) と นี้ níi (ニー) を声調で区別でき、〔名詞+数詞+類別詞〕〔名詞+類別詞+指示詞〕の語順で言える。主要な類別詞を知る。
「これ」「この本」「本2冊」。日本語ならどれも簡単ですが、タイ語では類別詞(るいべつし)という語がひとつ割り込みます。しかも日本語の「〜冊」と違って、数えないときにも必要です。第2部の最後に、この仕組みを組み立てましょう。
この章のゴール:นี่nîi (ニー) と นี้níi (ニー) を声調で区別でき、〔名詞+数詞+類別詞〕〔名詞+類別詞+指示詞〕の語順で言える。主要な類別詞を知る。
19-1นี่ と นี้ ── 声調が違えば働きが違う
タイ語の指示詞は3系列(近い・中くらい・遠い)あり、それぞれに2つの形があります。形の違いは、綴りでは声調記号ひとつ、音では声調ひとつだけです。
| 距離 | 代名詞「これ」 | 修飾語「この」 |
|---|---|---|
| 近い | นี่ nîi(下声) | นี้ níi(高声) |
| やや遠い💡 | นั่น nân(下声) | นั้น nán(高声) |
| 遠い | โน่น nôon(下声) | โน้น nóon(高声) |
いずれも頭子音は น、低子音です。第7章の規則を思い出してください。低子音にไม้เอก(◌่)が付けば下声、ไม้โท(◌้)が付けば高声です。つまり นี่ は ไม้เอก だから nîi(下声)、นี้ は ไม้โท だから níi(高声)。丸暗記ではなく、記号を見れば毎回導けます。
働きの違いは、日本語の「これ」と「この」の違いとまったく同じです。下声の形は単独で名詞のかわりに立ち、高声の形は名詞の後ろに付いて修飾します。
| นี่ | = | 名詞のかわり | / | นี้ | = | 名詞の後ろに付く |
| これ(下声) | この(高声) |
声調が働きを決める。下声=代名詞、高声=修飾語。
文になってしまうわけです。現象です。ここは第2章・第7章の復習を兼ねて、必ず声に出して区別してください。
ที่นี่・อย่างนี้ ── 場所と様子
下声の形に ที่thîi(場所・ところ)を足すと場所の語になります。
| タイ語 | 発音 | 意味 |
|---|---|---|
| ที่นี่ | thîi-nîi | ここ |
| ที่นั่น | thîi-nân | そこ |
| ที่โน่น | thîi-nôon | あそこ |
一方、高声の形に อย่างyàang(〜のよう)や แบบbɛ̀ɛp(型・タイプ)を足すと、様子を表す語になります。
19-2類別詞とは何か
タイ語で類別詞は ลักษณนามlák-sà-nà-naam と言います。日本語の「〜本・〜枚・〜台・〜冊」に当たる語です。ここまでは日本語話者にとって理解しやすい。問題は使う場面が日本語より広いことです。
日本語では「本を2冊」と数えるときにだけ助数詞が要り、「この本」と言うときには要りません。タイ語では「この本」にも類別詞が要ります。〔本 冊 この〕という言い方をします。さらに「どの本」〔本 冊 どれ〕、「大きい本」〔本 冊 大きい〕のように、特定の1つを指す文脈では常に顔を出します。
類別詞が必要になるのは、次の3つの場面です。
類別詞が要る3つの場面
- ① 数える:本2冊 〔名詞+数詞+類別詞〕
- ② 指す:この本 〔名詞+類別詞+指示詞〕
- ③ 特定して選ぶ:どの本/大きいほうの本 〔名詞+類別詞+疑問詞・形容詞〕
19-3語順の規則 ── 3つの型
型1 名詞+数詞+類別詞(数える)
| หนังสือ | + | สอง | + | เล่ม |
| 本(名詞) | 2(数詞) | 冊(類別詞) |
日本語「本2冊」と同じ並び。数詞と類別詞は必ずこの順。
「1つ」のときだけ、〔名詞+類別詞+หนึ่งnɯ̀ng〕という逆の順も使えます。意味が少しずれ、「ある1つの〜」という、特定しない不定の響きになります。
型2 名詞+類別詞+指示詞(指す)
| หนังสือ | + | เล่ม | + | นี้ |
| 本(名詞) | 冊(類別詞) | この(指示詞) |
数を言わなくても類別詞が要る。ここが日本語と決定的に違う。
数と指示を両方言うときは、〔名詞+数詞+類別詞+指示詞〕の順になります。
型3 名詞+類別詞+形容詞・疑問詞(選ぶ)
たくさんある中から特定の1つを選び出すときも、類別詞が仲立ちをします。第18章の ไหนnǎi がここに戻ってきます。
まとめ ① 類別詞の語順
- 「ある1つの」だけ例外:名詞+類別詞+หนึ่ง
19-4主要な類別詞
すべてを一度に覚える必要はありません。上から10個を先に身に付ければ、日常会話の8割は回ります。
| 類別詞 | 発音 | 数えるもの |
|---|---|---|
| คน | khon | 人(一般) |
| ตัว | tua | 動物・衣類・机・椅子・文字 |
| อัน | an | 小さい物一般(汎用) |
| เล่ม | lêm | 本・ノート・ろうそく・刃物 |
| ใบ | bai | 容器・葉・紙・鞄・切符・帽子 |
| ลูก | lûuk | 丸いもの・果物・ボール・山 |
| 類別詞 | 発音 | 数えるもの |
|---|---|---|
| คัน | khan | 車・自転車・傘・スプーン |
| ดวง | duang | 星・太陽・月・切手・電灯・心 |
| ต้น | tôn | 木・植物・柱 |
| แผ่น | phɛ̀n | 平たいもの・板・CD |
| เครื่อง | khrɯ̂ ang | 機械・家電・飛行機 |
| ชิ้น | chín | 切り分けた一片・商品の個 |
| ผล | phǒn | 果実(改まった言い方) |
| ดอก | dɔ̀ɔk | 花 |
| องค์ | ong | 僧・仏像・王族(敬意) |
| รูป | rûup | 僧(数えるとき)・像 |
| ท่าน | thâan | 人(目上・敬意) |
| ห้อง | hɔ̂ ng | 部屋 |
| หลัง | lǎng | 家・建物 |
| คู่ | khûu | 対になるもの・靴・箸 |
| ขวด | khùat | 瓶 |
| แก้ว | kɛ̂ ɛo | グラス(に入った飲み物) |
| จาน | jaan | 皿(に盛った料理) |
| ถ้วย | thûai | 碗・カップ |
| ซอง | sɔɔng | 封筒・袋入りのもの |
| กล่อง | klɔ̀ng | 箱 |
| ฉบับ | chà-bàp | 手紙・書類・新聞 |
| เรื่อง | rɯ̂ ang | 物語・映画・事柄 |
| อย่าง | yàang | 種類(〜通り) |
| ชนิด | chá-nít | 種類(品種・種別) |
| แห่ง💡 | hɛ̀ng | 施設・支店・場所 |
| ที่ | thîi | 席・(料理の)人前 |
แก้วkɛ̂ɛo(グラス)、ขวดkhùat(瓶)、จานjaan(皿)、ถ้วยthûai(碗)は、いずれも
入れ物の名詞がそのまま類別詞になったものです。日本語の「コーヒー2杯」「ビール3本」とまったく同じ発想ですから、覚える負担はほとんどありません。
コーヒー2杯
ビール3本
19-5迷ったら อัน、名詞自身が類別詞になることもある
汎用の อัน
類別詞がわからないとき、手に取れる大きさの物なら อันan (アン) で切り抜けられます。厳密には正しくない場合もありますが、通じないことはありません。
店で使う「これ・それ」は อันนี้ が最強
商品名がわからなくても、指をさして อันนี้an-níi(これ)と言えば買い物は成立します。数を言うときも anníisɔ̌ɔngan(これを2つ)のように อันan を重ねて使えます。旅行でも出張でも、まずこの一語を確実に
อันนีสองอัน
してください。
名詞自身が類別詞になる場合
一部の名詞は、自分自身を類別詞として使います。日本語で「3か国」「2部屋」と言うのと同じで、名詞と単位が同じ語なのです。
この型では、指示詞を付けるときに同じ語を2回言わず、1回で済ませます。「この部屋」は〔部屋 部屋 この〕ではなく〔部屋 この〕です。
類別詞の数は辞書によっては200を超えます。全部覚えようとすると挫折します。幸いなことに、類別詞を間違えても意味は通じます。タイ人も日常会話では汎用の อันan で済ませることが珍しくありません。むしろ怖いのは語順の誤りで、〔数詞+類別詞+名詞〕と英語式に並べると理解してもらえません。優先順位は、①語順を固める → ②上位10語を覚える → ③残りは出会うたびに足す、の順です。運用の詳細は第32章で改めて扱い、一覧は付録Cにまとめてあります。
まとめ ② 指示詞と類別詞
- 下声 นี่nîi นั่นnân โน่นnôon = 代名詞「これ・それ・あれ」
- 高声 นี้níi นั้นnán โน้นnóon = 修飾語「この・その・あの」(名詞の後ろ)
- 類別詞は数えるときだけでなく、指すとき・選ぶときにも要る。
- わからなければ อันan 。名詞自身が類別詞になる語もある(ห้องhɔ̂ng ประเทศprà-thêet คนkhon วันwan )。
19-6会話で確かめる
会話1 書店で
| 店員 | サワッディーカハーアライユーカ |
いらっしゃいませ。何をお探しですか。
| ケン | ポムハーナンスーパーサータイクラップ |
タイ語の本を探しています。
| 店員 | レムナイカミーサームレムカ |
どれになさいますか。3冊ございます。
| ケン | レムニーラーカータオライクラップ |
この本はいくらですか。
| 店員 | サームローイハーシップバートカ |
350バーツです。
| ケン | レーオレムナンラクラップ |
では、そちらの本は。
| 店員 | レムナントゥーククワーカソーンローイバートカ |
そちらのほうが安いです。200バーツです。
| ケン | ポムアオソーンレムニークラップ |
この2冊をいただきます。
| 店員 | タンモットハーローイハーシップバートカサイトゥンマイカ |
全部で550バーツです。袋にお入れしますか。
| ケン | マイサイクラップコーバイセットヌンバイドゥアイクラップ |
結構です。領収書を1枚ください。
この短い会話に、類別詞 ☕เล่มlêm ・ใบbai と、〔類別詞+指示詞〕〔数詞+類別詞〕〔名詞+数詞+類別詞+指示詞〕の3
類別詞を持つのはタイ語だけではありません。中国語(本、张、只)、ベトナム語、マレー語、ミャンマー語、そして日本語(冊・枚・台)と、東アジア・東南アジアに広く分布しています。言語の系統はばらばらですが、この地域では類別詞が共通の特徴になっています。第1章で触れた言語連合の典型例です。裏を返せば、日本語話者は類別詞の発想をすでに持っているということでもあります。英語話者が一から学ぶのに比べれば、大きな有利です。