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語順の基本 ── SVOと後置修飾

第2部 ・ 第11章

ここから文法に入ります。第1部で身につけた文字と声調を、いよいよ「文」にしていきます。最初に扱うのは語順です。タイ語には助詞も活用もありません。語の並び順だけが、誰が何をしたのかを決めています。この章の内容は、以後すべての章の土台になります。

この章のゴール:タイ語の基本5文型を組み立てられる。場所・時間・副詞を正しい位置に置ける。長い名詞句を前から読み下せる。

11-1助詞がない ── 位置が役割を決める

日本語では「私が彼を見た」も「彼を私が見た」も同じ意味です。順番を入れ替えても「が」「を」が付いているので、誰が見たのかがわかります。日本語話者はこの自由さに慣れきっています。タイ語にはこの助詞がありません。代わりに動詞の前が主語、動詞の後ろが目的語という約束があります。この約束が唯一の手がかりなので、順番を入れ替えると意味そのものが変わってしまいます。

phǒmผมポム
hěnเห็นヘン
khǎoเขาカオ
私は彼を見た。〔私 見る 彼〕
khǎoเขาカオ
hěnเห็นヘン
phǒmผมポム
彼は私を見た。〔彼 見る 私〕
語は同じ3つ。順番だけで主語と目的語が入れ替わる。
ผมเห็นเขา
主語動詞目的語

動詞の左が主語、右が目的語。この位置関係が「が」「を」の代わりをする。

日本語話者がやりがちなのは、日本語の語順のまま単語を置き換えてしまうことです。「私は彼を見た」を頭から訳して〔私 彼 見る〕としてしまう。これはタイ語では〔私が彼を見る〕ではなく、意味の取れない語の列になります。

phǒmผมポム
khǎoเขาカオ
hěnเห็นヘン
私は彼を見た。
日本語の順序をそのまま持ち込んだ形。通じない。
phǒmผมポム
hěnเห็นヘン
khǎoเขาカオ
私は彼を見た。

11-2基本の5文型

タイ語の文は、次の5つの型でほぼ説明がつきます。まずこの5つを見取り図として頭に入れましょう。

構造意味
主語+動詞ผมไป私は行く
主語+動詞+目的語ผมกินข้าว私はごはんを食べる
主語+動詞+人+ものผมให้เขาเงิน私は彼にお金をあげる
主語+動詞+場所ผมอยู่บ้าน私は家にいる
主語+形容詞บ้านใหญ่家は大きい

① 主語+動詞

phǒmผมポム
paiไปパイ
khrápครับクラップ
私は行きます。

② 主語+動詞+目的語

phǒmผมポム
sɯ́ ɯซื้อスー
nǎng-sɯ̌ ɯหนังสือナンスー
私は本を買います。
khǎoเขาカオ
dɯ̀ ɯmดื่มドゥーム
kaa-fɛɛกาแฟカーフェー
彼はコーヒーを飲みます。

③ 主語+動詞+人+もの(二重目的語)

phǒmผมポム
hâiให้ハイ
khǎoเขาカオ
ngənเงินングン
私は彼にお金をあげます。〔私 与える 彼 お金〕

④ 主語+動詞+場所

phǒmผมポム
yùuอยู่ユー
bâanบ้านバーン
私は家にいます。
khǎoเขาカオ
paiไปパイ
tà-làatตลาดタラート
彼は市場へ行きます。
「〜へ」に当たる語は不要。動詞のすぐ後ろに場所を置くだけ。

⑤ 主語+形容詞

タイ語の形容詞は、それ自体が述語になれます。英語の be 動詞や日本語の「です」に当たる語は要りません。この性質から、タイ語の形容詞は状態動詞とも呼ばれます(第16章)。

bâanบ้านバーン
yàiใหญ่ヤイ
家は大きいです。
aa-hǎanอาหารアーハーン
thaiไทยタイ
à-rɔ̀iอร่อยアロイ
mâakมากマーク
khrápครับクラップ
タイ料理はとてもおいしいです。

⚠ ⑤に เป็นpen を入れてはいけません

英語の be 動詞の感覚で bâanpenyài とやってしまう人が非常に多いのですが、これは誤りです。เป็นpen は「〜とい

บ้านเป็นใหญ่

う身分・種類である」という意味で、後ろには名詞しか来ません(第14章)。形容詞の前には何も置きません。

5文型のまとめ

11-3主語と目的語の省略

ここは日本語話者に有利な点です。タイ語は、文脈から明らかな要素をどんどん落とします。英語のように「主語は必ず必要」ではありません。

paiไปパイ
mǎiไหมマイ
khrápครับクラップ
(あなたは)行きますか。
paiไปパイ
khrápครับクラップ
(私は)行きます。

ただし省略には条件があります。誰のことか相手にわかっているときだけです。初対面の自己紹介や、話題を切り替えた直後は、主語を明示します。ビジネスの場では、責任の所在をはっきりさせるためにも主語を言うほうが安全です。

11-4二重目的語 ── ให้ の文型

「AにBをあげる」のように目的語が2つ来る動詞では、人が先、ものが後と決まっています。日本語の「彼にお金を」と同じ順序なので覚えやすい部分です。

ผมให้เขาเงิน
主語与えるもの

与える相手(人)が先、与えるもの(物)が後。

phǒmผมポム
hâiให้ハイ
phɯ̂ anเพื่อนプアン
nǎng-sɯ̌ ɯหนังสือナンスー
私は友達に本をあげます。
khǎoเขาカオ
sòngส่งソン
lûuk-kháaลูกค้าルーッカー
jòt-mǎaiจดหมายヂョットマーイ
彼は顧客に手紙を送ります。
khruuครูクルー
sɔ̌ɔnสอนソーン
nák-rianนักเรียนナックリアン
phaa-sǎa-thaiภาษาไทยパーサータイ
先生は生徒にタイ語を教えます。

同じ型をとる動詞は多くありません。まず ให้hâi(与える)、ส่งsòng(送る)、สอนsɔ̌ɔn(教える)、บอกbɔ̀ɔk(告げる)の4つを押さえておけば足ります。

11-5場所・時間・副詞をどこに置くか

ここが第2の関門です。日本語では「昨日 私は 会社で 働いた」のように、副詞句をどこに置いても構いません。タイ語には位置の原則があります。

位置の原則

場所は文末

phǒmผมポム
tham-ngaanทำงานタムンガーン
thîiที่ティー
bɔɔ-rí-sàtบริษัทボーリサット
私は会社で働きます。〔私 働く で 会社〕
khǎoเขาカオ
kinกินキン
khâaoข้าวカーオ
thîiที่ティー
ráanร้านラーン
彼は店でごはんを食べます。
目的語より後ろ。動詞と目的語の間に割り込ませない。
khǎoเขา
kinกิน
thîiที่
ráanร้าน
khâaoข้าว
彼は店でごはんを食べます。

時間は文末、または文頭

phǒmผมポム
paiไปパイ
tà-làatตลาดタラート
mɯ̂ a-waanเมื่อวานムアワーン
私は昨日市場へ行きました。
mɯ̂ a-waanเมื่อวานムアワーン
phǒmผมポム
paiไปパイ
tà-làatตลาดタラート
昨日、私は市場へ行きました。
文頭に出すと「昨日は」と話題を立てる感じになる。日本語と同じ。
phrûng-níiพรุ่งนีプルンニー
raoเราラオ
miiมีミー
prà-chumประชุมプラチュム
khrápครับクラップ
明日、私たちは会議があります。

時間と場所が両方あるときは、場所が先、時間が後が自然です。英語と同じ順序と覚えると楽です。

phǒmผมポム
tham-ngaanทำงานタムンガーン
thîiที่ティー
bâanบ้านバーン
wan-níiวันนี้ワンニー
私は今日、家で働きます。〔私 働く で 家 今日〕

副詞も後ろに足す

khǎoเขาカオ
phûutพูดプート
reoเร็วレオ
mâakมากマーク
彼は話すのがとても速いです。
khunคุณクン
phûutพูดプート
phaa-sǎa-thaiภาษาไทยパーサータイ
kèngเก่งケン
mâakมากマーク
あなたはタイ語がとても上手ですね。
目的語のあとに様態の語が続く。褒めことばの定番。
khǎoเขาカオ
maaมาマー
sǎaiสายサーイ
sà-mə̌əเสมอサムー
彼はいつも遅れて来ます。
phǒmผมポム
kinกินキン
khâaoข้าวカーオ
thúk-wanทุกวันトゥックワン
私は毎日ごはんを食べます。

11-6後置修飾 ── 前から読み下せるタイ語

第1章で見たとおり、タイ語の修飾語は名詞の後ろに付きます。修飾語が2つ3つと重なっても原則は変わりません。ひたすら後ろへ足していきます。

nǎng-sɯ̌ ɯหนังสือナンスー
yàiใหญ่ヤイ
大きい本〔本 大きい〕
nǎng-sɯ̌ ɯหนังสือナンスー
yàiใหญ่ヤイ
sǐi-dɛɛngสีแดงシーデーン
赤くて大きい本〔本 大きい 赤い〕
nǎng-sɯ̌ ɯหนังสือナンスー
yàiใหญ่ヤイ
sǐi-dɛɛngสีแดงシーデーン
thîiที่ティー
phǒmผมポム
sɯ́ ɯซื้อスー
mɯ̂ a-waanเมื่อวานムアワーン
私が昨日買った赤くて大きい本
〔本 大きい 赤い ── 私 買う 昨日〕
หนังสือใหญ่สีแดงที่ผมซื้อเมื่อวาน
大きい赤い私が昨日買った

核となる名詞が先頭。説明はすべて後ろへ流れていく。

日本語では、この名詞句は「私が昨日買った赤くて大きい本」となり、いちばん言いたい「本」が最後に来ます。長い修飾が付くと、最後まで聞かないと何の話かわかりません。タイ語は逆です。まず「本」と言ってしまう。あとは説明を足すだけなので、話し手も聞き手も途中で迷子になりません。

日本語タイ語の並び実際のタイ語
私はごはんを食べる私 食べる ごはんผมกินข้าว
大きい家家 大きいบ้านใหญ่
私の本本 私หนังสือผม
タイ料理料理 タイอาหารไทย
昨日、家で働いた働く で 家 昨日ทำงานที่บ้านเมื่อวาน
彼にお金をあげた🇯🇵与える 彼 お金ให้เขาเงิน
とても上手に話す話す 上手 とてもพูดเก่งมาก

11-7会話で語順を確かめる

会話1 オフィスで

khunคุณ
maa-liiมาลี
paiไป
nǎiไหน
khrápครับ
ケンクンマーリーパイナイクラップ

マリーさん、どこへ行くんですか。

dì-chǎnดิฉัน
paiไป
tà-làatตลาด
khâค่ะ

マリーディチャンパイタラートカ

私は市場へ行きます。

sɯ́ ɯซื้อ
à-raiอะไร
khrápครับ
ケンスーアライクラップ

何を買うんですか。

sɯ́ ɯซื้อ
aa-hǎanอาหาร
khâค่ะ
マリースーアーハーンカ

食べ物を買います。

主語は省略。文脈で「私が」とわかる。

wan-níiวันนี้
raoเรา
miiมี
prà-chumประชุม
thîiที่
bɔɔ-rí-sàtบริษัท
khrápครับ
ケンワンニーラオミープラチュムティーボーリサットクラップ

今日、会社で会議がありますよ。

khâค่ะ
dì-chǎnดิฉัน
จะ
klàpกลับ
reoเร็ว
khâค่ะ
マリーカディチャンヂャクラップレオカ

はい。早く戻りますね。

この6行に、この章の内容がすべて出ています。主語+動詞+目的語、場所は文末、時間は文頭、様態の副詞は動詞のあと、そして文脈が明らかなら主語は落とす。

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