声調規則の完全整理
第1部 ・ 第7章
任意のタイ語の綴りを見て、声調を規則から導ける。ห นำ・อ นำ・二重子音・อักษรนำ を含む語も判定できる。
本書でいちばん大事な章です。タイ語の声調は、勘や暗記で決まるのではありません。綴りを見れば機械的に決まります。決めているのは4つの要素だけ。この章を終えれば、初めて見る語でも正しい声調で読めるようになります。逆にここが曖昧なままだと、この先ずっと発音が定まりません。焦らず、何度も戻ってきてください。
この章のゴール:任意のタイ語の綴りを見て、声調を規則から導ける。ห นำ・อ นำ・二重子音・อักษรนำ を含む語も判定できる。
7-1声調を決める4つの要素
タイ語の音節の声調は、次の4つの情報だけで決まります。それ以外の要素は関与しません。
| ① 頭子音の類 | + | ② 生音節か死音節か | + | ③ 母音の長短 | + | ④ 声調記号 | ⇒ | 声調が1つに決まる |
| 中・高・低 | 第6章 | 低子音の死音節のみ | なし ่ ้ ๊ ๋ |
4つの情報を順に見れば、例外なく声調が決まる。暗記するのは表であって、語ではない。
準備として、4つの声調記号の名前を確認しておきます。記号は頭子音の上に書きます(上に母音記号があるときは、その上に重ねます)。
| 記号 | タイ語名 | 発音 | 例 |
|---|---|---|---|
| -่ | ไม้เอก | mái èek | ไก่kài (鶏)/ไม่mâi (〜ない) |
| -้ | ไม้โท | mái thoo | บ้านbâan (家)/น้ำnáam (水) |
| -๊ | ไม้ตรี | mái trii | โต๊ะtó (机) |
| -๋ | ไม้จัตวา | mái jàt-tà-waa | เดี๋ยวdǐao (ちょっと) |
ここが最大の落とし穴です。ไม้เอกmái èek は「第1記号」、ไม้โทmái thoo は「第2記号」という意味で、声調名の เอก(低声)・โท(下声) と同じ語を使っています。しかしไม้เอก が付けば必ず低声、というわけではありません。低子音に ไม้เอก が付くと下声になります。ไม่mâi がその例です。記号は「声調そのもの」ではなく「声調を決める材料のひとつ」。ここを混同すると一生ずれ続けます。
7-2中子音の声調 ── 5声調すべてが出せる
中子音 ก จ ฎ ฏ ด ต บ ป อ は、いちばん素直です。5つの声調すべてを表せる唯一の類で、しかも規則が単純です。
| 条件 | 声調 | 例 |
|---|---|---|
| 記号なし+生音節 | 平声 | กินkin (食べる)/ดีdii (よい)/ไปpai (行く) |
| 記号なし+死音節 | 低声 | จะjà (〜だろう)/ปิดpìt (閉める)/บาทbàat (バーツ) |
| ไม้เอก - | 低声 | ไก่kài (鶏)/ก่อนkɔ̀ɔn (前に) |
| ไม้โท - | 下声 | บ้านbâan (家)/ได้dâai (できる) |
| ไม้ตรี - | 高声 | โต๊ะtó (机)/ก๊อกkɔ́ɔk (蛇口) |
| ไม้จัตวา - | 上声 | เดี๋ยวdǐao (ちょっと)/ตุ๋นtǔn (煮込む) |
中子音では母音の長短は関係しません。死音節ならすべて低声です。また ◌๊ と ◌๋ は原則として中子音にしか付かないので、この2つの記号が見えたら頭子音は中子音と考えて、そのまま高声・上声と読んでかまいません。
7-3高子音の声調 ── 記号は2つだけ
高子音 ข ฃ ฉ ฐ ถ ผ ฝ ศ ษ ส ห には、ไม้เอก と ไม้โท しか付きません。表せる声調は上声・低声・下声の3つです。
| 条件 | 声調 | 例 |
|---|---|---|
| 記号なし+生音節 | 上声 | ขายkhǎai (売る)/ผมphǒm (私)/สองsɔ̌ɔng (2) |
| 記号なし+死音節 | 低声 | ถูกthùuk (安い)/ผักphàk (野菜) |
| ไม้เอก - | 低声 | ข่าวkhàao (ニュース)/ส่งsòng (送る) |
| ไม้โท - | 下声 | ข้าวkhâao (ごはん)/ห้องhɔ̂ng (部屋) |
中子音との違いは1点だけです。記号なしの生音節が、中子音では平声なのに、高子音では上声になります。それ以外(死音節=低声、ไม้เอก=低声、ไม้โท=下声)はまったく同じです。
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高子音+ไม้เอก → 低声。記号なしの死音節と同じ声調になる。
高子音 ข で作れる3声調をひと組にして覚えると効率的です。
ขาวkhǎao(白い・上声)/ข่าวkhàao(ニュース・低声)/ข้าวkhâao(ごはん・下声)。
高子音 ส でも同じことができます。
เสือsɯ̌ a(虎・上声)/เสื่อsɯ̀a(ござ・低声)/เสื้อsɯ̂ a(服・下声)。
「虎がござの上で服を着ている」と覚えるのがタイの定番です。声調を外すと動物と衣服を取り違えます。
7-4低子音の声調 ── 死音節が2つに割れる
低子音24字は、少しだけ複雑です。死音節が母音の長短で2つに分かれるのがその原因です。ここだけ、しっかり時間をかけてください。
| 条件 | 声調 | 例 |
|---|---|---|
| 記号なし+生音節 | 平声 | มาmaa (来る)/คนkhon (人)/งานngaan (仕事) |
| 記号なし+死音節+短母音 | 高声 | นกnók (鳥)/รักrák (愛する)/ครับkhráp (です) |
| 記号なし+死音節+長母音 | 下声 | มากmâak (とても)/พูดphûut (話す) |
| ไม้เอก - | 下声 | ไม่mâi (〜ない)/พ่อphɔ̂ɔ (父) |
| ไม้โท - | 高声 | น้ำnáam (水)/แล้วlɛ́ɛo (もう) |
低子音では、記号の名前と結果が完全にずれます。ไม้เอก(エーク)が付くと下声。低声ではありません。ไม่mâi 、ที่thîi 、ค่ะkhâ はすべて下声です。ไม้โท(トー)が付くと高声。下声ではありません。น้ำnáam 、ม้าmáa 、ร้านráan はすべて高声です。高子音のつもりで読むと1段ずつずれます。「低子音は記号のぶんだけ上にずれる」と覚えてください。
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低子音+ไม้โท → 高声。
歴史的な理由があります。古いタイ語では、声調は3つしかなく、記号もその3つを表していました。ところがその後、頭子音が有声か無声かによって声調が2つに分裂するという大変化が起きました(声調分裂)。もとの有声子音が現在の低子音、無声子音が現在の高子音・中子音です。分裂の結果、同じ記号でも子音の類によって別の声調を表すようになり、しかも綴りは古いまま保存されました。つまりタイ文字の声調表記は13世紀の音を写した化石なのです。理不尽に見える規則にも、きちんとした来歴があります。
7-5完全一覧表と判定フローチャート
3つの類をひとつにまとめます。この表が本書の心臓部です。付録Aにも再掲しますが、まずここで頭に入れてください。
頭子音の類
| 生音節 | 死音節(短) | 死音節(長) | ไม้เอก | ไม้โท | ไม้ตรี | ไม้จัตวา | |
|---|---|---|---|---|---|---|---|
| 中子音 | 平声 | 低声 | 低声 | 低声 | 下声 | 高声 | 上声 |
ก จ ฎ ฏ ด ต บ ป อ
| 高子音 | 上声 | 低声 | 低声 | 低声 | 下声 | ─ | ─ |
ข ฃ ฉ ฐ ถ ผ ฝ ศ ษ ส ห
| 低子音 | 平声 | 高声 | 下声 | 下声 | 高声 | ─ | ─ |
ค ฅ ฆ ง ช ซ ฌ ญ ฑ ฒ ณ ท ธ น พ ฟ ภ ม ย ร ล ว ฬ ฮ
表を読むコツは縦に比べることです。
表から読み取れる3つの事実
- 死音節(記号なし)は、中子音も高子音も低声。低子音だけが高声/下声に分かれる。
- ไม้เอก は中子音・高子音では低声、低子音では下声。ไม้โท は中子音・高子音では下声、低子音では高声。低子音だ
け1段上にずれている。
- 母音の長短が効くのは、低子音の記号なし死音節だけ。それ以外では長短を考える必要がない。
実際の判定は、次の順序でたどります。
| ①類は? | → | ②記号は? | → | ③生か死か | → | ④低子音の死音節なら長短 | ⇒ | 声調決定 |
| 中/高/低 | あれば表で即決 | 末子音と母音 |
②で記号があれば、生死も長短も見なくてよい。慣れれば1秒で判定できる。
実際に判定してみる
2語で手順を確認しましょう。心の中で同じ手順をなぞってください。
ชุม:低子音 ช +末子音 -m=生音節・記号なし → 平声。
คุณ:低子音 ค +末子音 -n=生音節・記号なし → 平声。
声調記号は頭子音の真上に書きますが、上に母音記号があればそのさらに上に重なります(ที่thîi )。また二重子音では記号は2字目の上に書かれますが(เปล่าplào の は ่ล の上)、声調を決めるのは1字目です。
7-6ห นำ と อ นำ ── 声調を借りる仕組み
第5章で予告した仕掛けです。単独低子音 งญณนมยรลวฬ には同音の高子音がありません。そのままでは上声と低声が作れない。そこでタイ語は、音のない ห を前に置いて、その音節を高子音扱いにします。これが ห นำhɔ̌ɔ-nam(「先導する ห」)です。ห は発音されません。役目は「この音節は高子音のルールで読め」という指示だけ。ですから หนำ の語は、高子音の規則をそのまま当てはめれば読めます。
| 条件 | 声調 | 例 |
|---|---|---|
| 記号なし+生音 | 上 | หมาmǎa (犬)/หนูnǔu (ねずみ)/ไหมmǎi (〜ですか)/หลายlǎai (多くの)/หวานwǎan (甘 |
| 節 | 声 | い) |
| 記号なし+死音 | 低 | หมดmòt (尽きる)/หนักnàk (重い)/หยุดyùt (止まる) |
| 節 | 声 | |
| ไม้เอก - | 低 | ใหญ่yài (大きい)/หนึ่งnɯ̀ng (1)/หน่อยnɔ̀i (少し) |
声
| ไม้โท - | 下 | หน้าnâa (顔・前)/หญ้าyâa (草) |
声
ห นำ の効果は、次の3語を並べると一目瞭然です。
もう1組、日常でいちばん出会う3語です。
⚠ ห が読まれるときと読まれないとき
ห の直後に単独低子音が来るときだけ、ห は読まれず先導字になります。そうでなければ ห は普通の頭子音 h です。ให้hâi(与える)── ห の次は母音。だから ห は読まれて hâi。高子音+ไม้โท → 下声。ห้องhɔ̂ng(部屋)── 同じく ห は読まれる。หมาmǎa(犬)── ห の次は単独低子音 ม。ห は読まれない。
どちらの場合も高子音の規則で声調を決める点は共通です。結果は同じなので、判定に迷っても声調を間違えることはありません。
もうひとつ、อ นำɔɔ-nam という仕掛けがあります。中子音 อ が ย を先導し、中子音扱いにするものです。これに該当するのは次の4語だけで、すべて低声になります。数が少ないので丸暗記してください。
7-7二重子音と อักษรนำ
真の二重子音 อักษรควบแท้
2つの子音字が1つの音の塊として発音されるものを อักษรควบแท้àk-sɔ̌ɔn-khûap-thɛ́ɛ (真の二重子音)といいます。2字目は必ず ร ล ว のどれかです。
1字目の類
| 中 | กร กล กว ตร | กลางklaang (中央)/กว่าkwàa (〜より)/ตรงtrong (まっすぐ)/ปลาplaa (魚)/เปล่าplào |
| ปร ปล | (空の) | |
| 高 | ขร ขล ขว ผล | ขวาkhwǎa (右)/ขลุ่ยkhlùi (笛) |
| 低 | คร คล คว พร | ครับkhráp (です)/ความkhwaam (〜こと)/คลองkhlɔɔng (運河)/พร้อมphrɔ́ɔm (準備できた) |
| พล | /พลาดphlâat (しくじる) |
二重子音の声調は「1字目」で決まる
- กลางklaang ── 1字目 ก は中子音。生音節・記号なし → 平声。
- ขวาkhwǎa ── 1字目 ข は高子音。生音節・記号なし → 上声。
- ความkhwaam ── 1字目 ค は低子音。生音節・記号なし → 平声。
- ครับkhráp ── 1字目 ค は低子音。死音節・短母音 → 高声。
- กลับklàp (帰る)── 1字目 ก は中子音。死音節 → 低声。ครับkhráp と比べてください。
見かけだけの二重子音 อักษรควบไม่แท้
綴りは二重子音なのに、そのとおりに読まない組があります。อักษรควบไม่แท้àk-sɔ̌ɔn-khûap-mâi-thɛ́ɛ (偽の二重子音)です。2種類あります。① ทร は s と読む。まったく違う音になるので、知らないと絶対に読めません。
② ร が読まれない。จร ซร ศร สร では、2字目の ร は無視します。
อักษรนำ ── 書かれない短母音と、引き継がれる子音類
最後の仕組みです。สบายsà-baai (快適だ)や ถนนthà-nǒn (道路)のように、子音字が2つ続いているのに母音記号がな
| い語があります。この場合、1字目のあとに短母音 | a | が書かれずに補われ、2音節として読みます。これを |
อักษรนำàk-sɔ̌ɔn-nam (先導字)といいます。
| ถ | + | น | + | น | → | ถะ | + | หนน |
| thà 低声 | nǒn 上声 |
1字目は短母音 a が補われて死音節(→ 高子音なので低声)。2字目は1字目の類を引き継ぐ(→ 高子音扱いで上声)。
の2つの規則
- 第2音節:2字目が単独低子音(ง ญ ณ น ม ย ร ล ว ฬ)のとき、1字目の子音類を引き継ぐ。高子音が先導すれば高
子音として、中子音が先導すれば中子音として声調を決める。
- 2字目が単独低子音でないとき(対字や中子音・高子音)は引き継がない。それぞれ自分の類で決める。
| 語 | 発音 | 声調の導き方 |
|---|---|---|
| ถนน | ถนนthà-nǒn | ถ(高)+単独低子音 น → น は高子音扱い。生音節・記号なし → 上声。 |
| ขนม | ขนมkhà-nǒm | ข(高)+単独低子音 น → 上声。「お菓子」。 |
| สนุก | สนุกsà-nùk | ส(高)+น → 高子音扱い。死音節 → 低声。「楽しい」。 |
| ตลาด | ตลาดtà-làat | ต(中)+単独低子音 ล → ล は中子音扱い。死音節 → 低声。 |
| จมูก | จมูกjà-mùuk | จ(中)+ม → 中子音扱い。死音節 → 低声。「鼻」。 |
| แผนก | แผนกphà-nɛ̀ɛk | ผ(高)+น → 高子音扱い。死音節 → 低声。「部署」。 |
| สบาย | สบายsà-baai | ส(高)+บ は中子音 → 引き継がない。บ 自身の中子音・生音節 → 平声。 |
| เฉพาะ | เฉพาะchà-phɔ́ | ฉ(高)+พ は対字の低子音 → 引き継がない。低子音・死音節・短母音 → 高声。「特に」。 |
| ทหาร | ทหารthá-hǎan | 先導字が低子音 ท。第1音節は低子音の死音節・短母音 → 高声。第2音節 ห は高子音のまま → 上 |
声。
| ธนาคารธนาคารthá-naa-khaan | ธ(低)→ 高声。以下 นาคาร は低子音・生音節 → 平声・平声。「銀行」。 |
ビジネスのタイ語には อักษรนำ の語が驚くほど多く出てきます。บริษัทbɔɔ-rí-sàt(会社)、
แผนกphà-nɛ̀ɛk(部署)、ผลิตphà-lìt(生産)、สถานีsà-thǎa-nii(駅)。
これらは綴りを見た瞬間に「これは2音節だな」と気づけるかが勝負です。子音字が2つ並んで母音記号がなければ、まずอักษรนำ を疑ってください。
会話1 声調だけが違う語に注意して
| ケン | バーンクンユークライマイクラップ |
お宅は遠いですか。
| ナム | マイクライカクライマークカ |
遠くありません。とても近いです。
| ケン | ミーマーマイクラップ |
犬はいますか。
| ナム | ミーカマーシーカーオカ |
います。白い犬です。
| ケン | ポムチョープマーマーククラップ |
私は犬が大好きです。
| ナム | プルンニーマーバーンダーイカ |
明日、家に来ていただけますよ。
この会話には ไกลklai (遠い・平声)と ใกล้klâi (近い・下声)、มาmaa (来る・平声)と หมาmǎa (犬・上声)が同居しています。声調を落とすと正反対の意味になったり、犬が来てしまったりします。音読して体に入れてください。